リンカーン
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映画感想文
「妥協」「策略」
ときいて、どう感じますか?
いいイメージは湧かないですよね。
ネガティブなことばかり、思いおこします。
しかし、本当に物事を成し遂げたいと思えば、状況に応じて「妥協」したり「策を弄する」ことは、とても大事なことです。
スピルバーグの最新作「リンカーン」を観て、そう思いました。
リンカーンの時代。
人種差別は悪いことだ。
奴隷を解放して、全ての人間に平等な権利を。
と、急進的な改革派の人間は主張していました。
しかし、本当にそれを実行するには、途方も無い困難を伴うことでした。
理想を追いかけすぎるのではなく、どこかで折り合いをつけたり、策を弄することが必要です。
まずは、奴隷制度を廃止すること。
1歩1歩確実に実行すること。
急速な変化は、保守的な人間の同意を得ることはできません。
理想を追いかけ過ぎて、そもそも奴隷制度の廃止までオジャンになることは避けなければいけません。
「妥協」は決して後退ではありません。
物事を1歩進めるために必要なことなのです。
作品中でリンカーンが、こんな感じのことを言ってました。
「コンパスで北がどこにある分かっても、そこに向かって真っすぐには進む事はできない」
方向さえ分かっておれば、たとえ時間がかかろうとも、成し遂げられることでしょう。方向は間違ってないのですから。
しかし、最短距離で行こうと真っすぐ進んだとしても、途中で大きな川があるかもしれません。そこで無理して進んで流され溺れてしまっては元も子もありません。
そして、どんな手を使ってでも成し遂げること。
リンカーンは策を弄しながら、約束を反古することも厭いません。
大いなる大義のために、小事を気にしてどうするのか。
劇中、一番リンカーンが激高した場面に息を飲みました。
話は変わって、この映画はスティーブン・スピルバーグの最新作です。
私は物心ついたころから、映画が大好きで、もうかれこれ40年近くになるんですが、その私の成長とともにスピルバーグの映画はいつも身近に存在していました。
そう考えるとすごいもので、40年もスピルバーグは第1線で活躍しているということになります。
そんな監督は他にはいません。そんなの役者にもいないし、歌手にもいない。
スピルバーグは、40年以上も、コンスタントに、世界中に話題を巻き起こす映画を提供し続けています。それも娯楽作から社会派な作品まで、それもすべてがクオリティが高く、商業的にも娯楽的にも芸術的にも、とてもバランスのとれた作品を提供し続けています。
そういう理由で、もし映画史上最高の監督は? と問われると
私はスティーブン・スピルバーグだと即答します。
今回の作品は、予告編のイメージと違って、とても静かで優しい映画でした。
スピルバーグはどんな悲惨な映画でも優しさを忘れません。とくに社会的弱者に対する眼差しはとても優しさにあふれてます。
本作は、スピルバーグにしては静寂で地味な映画なんですけど、優しい空気の中にさりげない風格と余裕を感じ入りました。
もはやスピルバーグは、一歩突き抜けて映画の境地に達したのではないかと思うほどです。
世界最高峰の俳優、ダニエル・デイ・ルイスとトミー・リー・ジョーンズの演技も見物です。
2人が対峙する場面のなんともいえぬ素晴らしさ。
最高の監督、最高の役者。
これぞ、映画の中の映画。
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