キャプテン・フィリップス
公開日:
:
最終更新日:2017/05/28
映画感想文 キャプテン・フィリップス
「海賊王に、俺はなる」
(モンキー・D・ルフィ)
「俺は、俺の旗の下に、自由に生きる」
(宇宙海賊 キャプテンハーロック)
海賊が主人公のマンガ、映画はたくさんあり、私たちは海賊が大好きです。
百田尚樹さんの「海賊と呼ばれた男」、和田竜さんの「村上海賊の娘」、パイレーツ・オブ・カリビアンのジャック・スパロウなどなど、どうも海賊にはポジティブなイメージがついているようです。
海賊には、何者にもとらわれない自由を感じ、私たちは憧れを抱くのでしょうか?
あのスティーブ・ジョブズでさえ、
「海軍に入るくらいなら、海賊になった方がいい」
という言葉を残してるように、
海賊はクリエイティビティ、イノベーションの象徴とみる人も多いことでしょう。
では、
実際の海賊は、一体どうなのでしょうか?
ソマリア沖で海賊に人質に取られたアメリカ人の実話に基づく映画『キャプテン・フィリップス』を観ました。
海賊とは、なんてことはない。
ただのチンピラです。
ソマリアの若者は、ただただ生きる為に海賊をしています。
ヤクザのシノギのように、ボスに献上するために、海賊行為をしています。
そこには、麦わら海賊団のような友情も夢もなく、
キャプテンハーロックのような仁義などありません。
そこに獲物があるから、強奪する。
ただ、それだけなのです。
「君たちは漁師だろ、海賊する以外に稼ぐ方法があるんじゃないか?」
のという人質にとられた船長の問いに対して
「ここはソマリアだ。アメリカではない。」
という海賊の答えに、この世界の不条理が凝縮されています。
海賊をする以外に生きる道のない絶望感が凝縮されています。
こういった海賊と人質とのコミュニケーションを通じて、彼らの人物描写に深く入り込み、海賊の人間性にスポットをあて、この世界の不条理に問題提起をするヒューマンドラマになるのかと思いきや、これ以上突っ込まず、ドラマを期待する観客を無造作に突き放します。
ただただ起きている事実を冷静に描き続けます。
そしてこれは、人質にとられた船長の英雄談でもありません。
彼は、ただ生きて帰りたい。その一心で海賊と対峙します。
最後の最後で緊張の糸がぷつんと切れ、船長は泣きじゃくりながら海賊に抵抗します。
カッコ悪いかもしれないけど、普通の一般人だから当り前です。
トム・ハンクスならではの自然の演技に心打たれます。
ソマリアは1990年代からの内戦でずっと無政府状態が続いています。
米ソ冷戦時代に、ソ連から大量に入った武器が、この混乱の1つの原因でもあります。
冷戦は終結するも、それが、今や先進国の人々に襲いかかるということに、パラドックスを感じずにはおられません。
ソマリアについては、よく知りませんが、
リドリー・スコット監督の映画『ブラック・ホーク・ダウン』や
白戸圭一さんの『ルポ資源大国アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄』
では、マンガ「北斗の拳」のような無秩序で暴力が支配する世界が描かれています。
ルポ資源大陸アフリカ―暴力が結ぶ貧困と繁栄 白戸 圭一 東洋経済新報社 |
興味を持たれたら、私の過去のブログ記事をご参考に。
「ルポ資源大陸アフリカ―暴力が結ぶ貧困と繁栄」
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=2479378
海賊の若者が、ふと
「アメリカに行きたい」
と自分の夢を語るシーンがあります。
その若者は、結局逮捕され、懲役33年間の刑でアメリカの刑務所に収容されてしまいます。
皮肉なようですが、彼の夢は、ある意味叶ったといえるかもしれません。
そのままソマリアにいれば、ずっと海賊を続けていたことでしょう。
彼らの本音は、多分、
「海賊王にはなりたくない」はずです。
でも、「海賊にならざるをえない」現実が、
ソマリアなのでしょう。
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