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この歳になって今更きけない中東情勢ですが、『イスラーム国の衝撃』を読めばバッチリかも

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連日イスラム国がトップニュースです。

日本人2人殺害後、ヨルダン人パイロットも殺害され、ヨルダンが報復に空爆、

それに対してイスラム国がアメリカ人を殺害。。。

憎しみの連鎖が続いています。

 

ますます混沌する中東情勢。

実は私は恥ずかしながら中東情勢についてよく分わかっていません。

これを機に、イスラム国とは一体なんなのか、どうして生まれたのか。

それらの謎を知るために

「イスラーム国の衝撃」

という本を読みました。

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イスラム国の組織、思想、メディア戦略、歴史について、平易な文章でとても分かりやすく書いています。

私のような中東問題初心者には最適な本だと思います。

 

 

 

簡単にまとめます。

 

中東問題がなぜ長きにわたって収束しないのか。

第一次世界大戦で敗れたオスマントルコは解体されました。

大戦中の1916年に、英・仏にロシアも加わって結ばれた秘密の取り決め「サイクスピコ協定」が、英・仏主導の戦後の中東秩序の大枠を示しました。英・仏が勝手に中東に線を引いたとところから、中東諸国の機能不全が始まりました。

それにイスラエル問題も加わり、イラン革命、湾岸戦争、911、イラク戦争と、永遠に戦争の連鎖が続いています。

 

近年起こった「アラブの春」でやっと中東全体に民主的な空気がただようかと期待されましたが、あれもつかの間でした。

皮肉にも「アラブの春」が、各国の過激派の目を覚ませました。「アラブの春」のおかげで、強力な独裁政権が倒され政府が弱体化し、そこに今まで地下に潜っていた過激派が台頭しました。

弱体化した政府は、辺境地域を統治できず、そこに過激派が自由に活動するようになりました。

もう1つ大きな要因は、アメリカの中東からの撤退です。オバマ政権の政策は、皮肉にも過激派の台頭を加速させました。

 

アラブの春、アメリカの撤退。

これらが、イスラム国の台頭を招くとは。

なんという皮肉。

 

過激派は、コーランの教えを都合のよいように解釈し、 YouTubeやSNSを駆使してジハード参加を訴えます。

このメディア戦略も巧妙で、SNSの特徴である拡散効果をうまく使っています。

そして、世界中からジハード戦士が集まってきています。彼らは金銭的な代償よりも、崇高なジハードの目的のために一身を犠牲にするつもりで、あるいはそのような高次の目的に関与することに魅力を感じてやってきます。

 

イスラム法学上ではジハードとは、アラーのためという目的にかなった戦闘のことであり、ジハードに参加すること(間接的な参加も可)はイスラム教徒の義務と考えられています。

何をもってジハードというかは、イスラム世界が異教徒の支配下に置かれて消滅の危機があるといったときです。

こういった考え方を為政者や過激派は自分たちに都合のよいように解釈し、自らの行いを正当化しています。

そして、ジハードをするべき時なのにジハードを行わない国家はイスラム教的には違法だと彼らは考え、まずはジハードを阻害している祖国を標的にします。イラクにしろ、シリアにしろ、反政府過激派が次から次へと出てくるのは、こういう思想的背景があるのです。

 

 

結局、中東情勢を収束するにはどうしたらよいのでしょうか。

それにはアメリカでもイギリスでもフランスでもなく、わすかな希望だが中東域内の地域大国以外にないだろうと筆者は述べます。

中東の地域大国であるイラン、トルコ、サウジアラビア、エジプトがそれぞれの勢力圏を拡張して、イラクやシリアの紛争を鎮静化するというのが、残された選択肢かもしれないと結んでいます。

 

 

 

その他、イスラム国のメディア戦略など興味深いことが多く、読み応えがあります。

 

イスラム国の話ですが、それから中東情勢を読み解く入門編として、おすすめします。

 

 

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