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V字回復の経営

公開日: :

今日は友人に薦められた
三枝匡さんの『V字回復の経営』を紹介。
(友人のブログ)
http://www.miraie-corp.com/shimada/2011/12/post-98.html

本書は、多くの企業の経営改革、事業再生を成功させてきた三枝匡さんの経験をもとにした小説である。
ここに書いてあることは社名、人名は変えてあるが、内容はほとんどが事実であり、小説であるが、経営の教科書として多くの経営者に読まれている。

さて、
経営不振のほとんどの要因は、経済環境や競合相手ではなく、内部にある。
経営改革する者には、最前線の敵ではなく、味方であるはずの後方から弾が飛んでくる。
多くの日本企業は、人間関係重視型の営業で成績優秀だった者が、年功で昇進するというシステム。
偉くなっても営業マンと一緒に竹槍持って野原をかけずり回るべきという考えの人間が多く、経営リテラシーが欠如している人間が多い。だから社内力学に流れやすい。
決してアホではない。1人1人は優秀なのだが、会社という「狭い世間」の中で、来る日も来る日も一緒に働いているうちに似たような価値観に染まっていく。だから社外で何が起こっているかということに鈍感になる。
でも社内のこと、とくに人事異動にはめちゃくちゃ詳しい。低成長組織では、人事異動は一大イベントだ。誰が昔、どの部署にいたか、他人の異動歴まで、よくもまあこんなにどうでもいいことを知ってるものだというくらい皆が実によく知っている。
こういうくだりには思わず苦笑い。
そういう組織になると、もはや顧客の方に向いて仕事をしなくなる。
機能別組織どおしが陰口を言い合い、顧客よりも社内政治が横行し、正しいことをすることよりも妥協重視の組織を醸成する。
そうやって組織は徐々に腐って行く。
ゆっくりと腐って行くので、腐っていることすら気がつかない。
そうはいっても、気づく人もいるけど、
「危機感がたりない」「意識改革をしよう」
と毎年のお題目のように唱えるばっかりなので、いつまでも変わらない。
言えば言うほど、危機感に対して麻痺してくるし、まったく感じなくなる。
中には、人と違った行動や発言をするものもいるが、彼らは叱責されたり、はずされたり、飛ばされたり。。。。そして、優秀な者がかなり社外に去り、残っている者もやる気を失っていることが多い。
しかし面白いことに、何人かの気骨の人材がまるで隠れキリシタンのように、会社、職場、仲間への愛着を捨てがたく残っている。
改革が辺境から起こるというのは、このためだ。

さて、改革に一番必要なものは何か?
月並みだが、結局は強力なリーダーシップと情熱に尽きる。
本書に出てくる主人公「黒岩莞太」がそれだ。
改革を断行する際は、必ず内部から強力な抵抗がおこる。
怪文書が飛び交ったり、社内政治の駆け引きが行われる。
それらに決して屈しない、有無を言わせない。
これは戦争だ。食うか食われるか。遠慮はしてはいけない。
そうはいっても改革チームを孤立させてはいけない。
経営陣が不退転の決意を決めることで、改革チームは前に進むことができる、

興味深い話がたくさんあったので、一部を紹介。
組織を機能別に分けることの愚について。
大企業では、組織を商品ごとでは無く、機能別に分けている。
開発部隊、製造部隊、販売部隊
というように。
この方が効率的だし、シナジー効果があると言われる。
本当にそうか?
本書では、シナジーは幻想だとバッサリ斬る。
自分で椅子を作って、それを自分で売った職人は、自分が作った椅子についての顧客満足度に敏感だ。
お客に嫌われたら、その痛みは直接自分の痛みとなる。
なので、職人は技術を磨き、努力する。
では、椅子製造を分業したらどうなるだろう。
椅子の脚だけ作る人間、背もたれだけを作る人間、シートだけを作る人間。。。
こうなるとチャップリンのモダンタイムスではないが、仕事に情熱をかけれなくなるであろう。
完成した椅子が何人にいくらで売れるかよりも、給料さえもらえればいいというようになる。
産業革命以降、工場労働者に起こったこの現象と同じことが、今、日本のホワイトカラーに起こっているのはないかという考察には激しく同意する。
分業では、本書のキーワードである経営で一番大事な
「創って、作って、売る」
ことが一貫しない。
プロダクトアウトの発想から抜け出れない。

そして、一番グッときたのがこれ。
改革プロジェクトチームが企業の問題点を洗い出すうちに、企業の実態を知るほどにこみ上げてくるこの思いに激しく共感した。

内向きの経験則や硬直した序列が幅をきかせ、若手が頭を抑えられ、会社の変身が抑制されている企業で、何かをきっかけにしてその抑圧の構図を読み取った社員が怒りを感じるのは当然であった。
その最たる思いは「自分が世間的に劣った人材に押込められていく」という恐怖感だ

自分の大切な人生を、ムダに過ごしてきたことへの怒り。
ムダにさせられてきたことへの怒り。
えてして、能力をムダに浪費させていることが多い。
入社したときは皆それなりに優秀だったはずなのに世間的に劣った人材に押込められていく。
僕の中では、この小説のハイライトのひとつだ。

そうはいっても、偉そうなことばかり書いてるけど、私はとても居心地が悪い思いをしながら書いている。
私も口だけ達者な評論家だからだ。
バカな本部が悪い、◯◯部、◯◯係が悪い、上司が悪い、部下が悪い、あいつが悪い。。。。
そこには自分はいない。
全部、他人が悪い。
そんなことばかり思って達観したつもりでいる。
傍観者に成り下がりつつある。
この本で、改革チームが初めて集められたミーティングで黒岩が最初に出したスライドを胸にとどめたい。

あなたはもはや野党ではいられない。

長くなった。
最後に、ある上場企業で満身創痍で改革に携わった人、心を突き動かすこの言葉で締めくくろう。

改革とは「魂の伝授」である。
経営者にとって一番大事なことは「高い志」である。

強い情熱と、高い志、
この本は、僕に一番欠けているものを改めて教えてくれた。

【合わせて読みたい】
組織戦略の考え方 企業経営の健全性のために
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=1949420


ビジョナリーカンパニー3 衰退の五段階
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=3317089

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