少女は自転車に乗って
「少女は自転車に乗って」という映画を観た。
自転車を買うために奔走する女の子のお話。
それって、別に何の変哲もない話と思うでしょう。
そう、僕たちの暮らしている日本ではね。
しかし、これがサウジアラビアだと話はまったく違う。
サウジアラビアは、世界経済フォーラム(WEF)による男女平等指数世界127位、
世界で唯一女性の自動車の運転が禁じられている国。
女性は映画館にも行けない。
そんな国で初の女性映画監督が、
女の子を主人公にした映画を作ったんだから、
なんともそれだけで、革命的なことに違いない。
映画の冒頭から僕の思ってるサウジアラビアのイメージが崩れます。
主人公の女の子のコンバースのアップで始まり、
家では普通に欧米人が着てるようなファッションで、悪魔の音楽と呼ばれる英語のロックを聴いています。
サウジアラビアといえば、
女性はみんな、アバーヤという黒い布で全身を覆い、ヒジャブというスカーフで髪を隠すという
全身黒ずくめの印象がありますが、この映画を観る限り、外出中だけのよう。
家や学校では、欧米人と同じような格好で、おしゃれに着飾っています。
ただ文化が違うだけで、どこの国の女性も興味を持つことは同じだということ。
この映画は反男尊女卑社会へのメッセージなのですが、
直接的なメッセージはなく、サウジの普通の家庭をたんたんと描く中に、静かだけれども力強いメッセージが伝わってきます。
主人公が自転車を買う為に、優勝賞金目当てにコーランの暗誦選手権に出場するというパラドックスな設定のおかげで、古い習慣とそれに静かに反抗する若者、男尊女卑社会、伝統文化の中で生きる女性の立場を説明的表現を用いず、観客に知らしめることができています。
映画自体は、大きな抑揚もなく、たんたんと進むのですが、
ところどころに出るセリフに、強烈なサウジの男尊女卑社会を感じます。
自転車に乗ると妊娠できない
男の人が見てる
男の人に聞こえますよ
ヒジャブ(顔を隠すスカーフ)をしなさい
その靴(コンバース)はやめなさい
第2妻
主人公の母親は、
夫に好かれるために、赤いドレスを買ったり、
夫が好きだから、髪を長くしてたり、
行動の全てが夫に好かれるために起因しています。
こういう母親の姿、そして、ことあるごとに、女の子は自転車に乗ってはいけない、姿を隠しなさいという社会的な空気。
そういった男尊女卑な空気をずっと感じてたからこそ、最後のオチがとても心に刺さります。
「自転車」と「女性の髪」がうまく物語の伏線、そして男女平等の象徴として使われています。
この親子の今後に一抹の不安を覚えつつも、
全サウジ女性を代弁するかのような明るい未来への希望が残る終わり方です。
ずっとその実態が謎だったサウジアラビアという国のいったんが垣間見える良作でした。
静かで地味な映画ですが、メッセージはとても優しくて強力で、こんな反体制的な映画を作った監督やスタッフが、本国で不当な目に会わないのだろうか心配してしまいます。
【参考】
サウディアラビアにおける女性の人権(Wikipedia)
http://bit.ly/1i1gJ1J
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