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映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を観て(ネタバレあり)

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『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を観ました。
聖地である広島の八丁堀福屋の映画館「八丁座」で。


3年前『この世界の片隅に』を観たときは、衝撃と涙で言葉にならなかったです。前回は反戦映画、戦時中の生活をリアルに描いたといった側面で語られることが多かったような気がしますが、今回観て感じたのが、普遍的な人間関係・家族の関係を深く描いているように感じました。

それは原作でも人気の遊郭のリンさんのエピソードを入れたことによって、物語に厚みがでたからでしょう。「この世界の片隅に」というタイトルの持つ意味が深く説得力を持ったような気がします。

以前はラスト近くで、すずさんが「この世界の片隅で私を見つけてくれてありがとう」っていうシーンに感動する一方で、ドラマとはいえそんなこと言うのかなと少し違和感を持ってました。

しかし、女の子が生まれたら売ればいいとサラッといえるリンさんの境遇(自身も売られた身)や、嫁入りという自分の意志とは関係なく他人の家の労働力・跡継ぎを生む役割になるという当時の環境にもかかわらず、利き腕を無くし労働力としての価値がなくなり、かつ不妊であることから居場所がなくなった(と勝手に思ってた)すずさんが実家に帰ることを皆で引き留める。一番邪険に扱われてた夫の姉からもあなたの居場所はここだといわれる。その矢先に広島に原爆が・・・。そういったエピソードの積み重ねがあのセリフに凝縮されたのではないかと思いました。


すずさんが右手を失ってからの怒涛の後半の展開は、すでに何回も何回も原作や映画を読んで知ってるのに、前のめりで体に力が入って見入っていました。

玉音放送を聞いたあとにすずさんが泣き叫ぶシーン、前回物議をかもしたあのシーンが、原作通りに戻ってました。やはりこちらのほうが違和感なく感情移入できました。暴力は暴力に従う。暴力に屈するやるせなさに感情を爆発させるこのシーンは人間社会の本質をついている映画史上でも屈指の名シーンだと個人的に思います。


最後の最後に原爆孤児を引き取り、その後の幸福な家庭を示唆するエンドロールに、ヒトはだれでも居場所が必要であること、人間社会の相互扶助の素晴らしさ、その連鎖が暴力のへの対抗手段の1つになりえるのではないかという希望をいだかせてくれます。

 

 

 

 

 

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