『地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』を読んで
「補助金が地方のガンなんや!」
いきなり帯の過激な文が目に飛び込んでくる
『地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』
という本を読んだ。
著者の豊富な地域おこしの経験を小説仕立てにして、事実だけを記載した本よりも、関係者の熱いパッションが伝わってくる。
シャッター商店街にある実家の整理をきっかけに商店街再生に始まり、地域全体の再生をしていく主人公とその仲間たちの物語を読んでいく過程で、地方の実態、地域再生のノウハウを学ぶことができる。
そこには補助金だのみ、名ばかりコンサル暗躍などの地方の根深い闇が描かれており、決して自治体のホームページやパンフレットで見られるようなキラキラしたものだけではないことが分かる。
地域再生を成功できるかどうかは、結局、自治体や補助金などの他力本願ではなく、当事者自信が熱量持って取り組めるかどうかに集約される。
以下、
マーカーをひいたところを抜粋(手抜きじゃないよ)
・いつまで待っても地元にスーパーマンは来ない
・ヒトなし・モノなし・カネなし、という困難な状況でもめげずに足を一歩前に出し進んできた「凡人」がいるかどうかが、各地域の明暗を分けるだけ
・どの地域だって〝始めること〟はすぐにできる
・大切なのは、「失敗せずに成功できるか」という発想そのものを捨てること。まずは一歩を踏み出してみること
・どこかの組織から予算をもらうのではなく、自分たちの出せる手持ち資金を出し合い、自分たちがこれが正しいと思うことに挑戦していく
・最悪なのは、人の予算を活用して、いつまでも勉強会をやるだけ、ワークショップをやるだけで、自ら事業にまったく取り組まない
・地域活性化の成否は、明るく楽しく、覚悟を決めて事業に取り組むメンバーが集まるかにかかっている。
・地方で小さく事業をスタートするときに大切なのは、先回りして営業し明確な顧客がいる商品・サービスを選択すること、優秀なメンバーと立ち上げること、そして最初にお金を使いすぎないことの三つだ
・必然的に賛否両論となる。万人が賛成するようなものは平凡すぎて今の地域に特別必要でもない(みんなの意見をまとめた公共施設に人が集まらないのはその典型)
・多少の批判は、事業がシャープになっている証拠だと前向きに捉える心持ちが必要。
・既得権益者からの批判は、構造変革に繋がっていることの裏返しでもある。対立するのではなく「ご意見お聞きしました!」とだけ言って、反映しなければよいことも多い。下手に批判に過剰反応していると、賛成してくれていた仲間のほうが離れていく。
・年度末になると政府、外郭団体、自治体などが発注した様々な調査が行われ、特徴的で成果をあげている取り組みには、情報提供依頼が殺到する。ヒアリングに対応し、それらの作業に見合うだけの対価を支払う調査はほとんどない。しかし、その依頼主であるシンクタンクなどは多額の予算を受託している。成果を出している現場がタダ働きし、それをただまとめるだけの組織ばかりが儲かる歪んだ構造がそこにはある。
・名ばかりコンサルタントによって税金が使われ、なおかつ地域で事業ひとつ立ち上がらない
・国が計画している情報をうまく聞き出して、先回りで知り合いの地域に提案を投げ、まとまった予算を獲得して稼いでいる輩も多いという。予算を貰って動く金がほしいシンクタンクやコンサルタントと、各地で小さくとも何らかの実績がほしい金を出す側の行政、それを取り仕切る大学教授というのは常にトリオなのだ。
・行政の調査の定番は成功した事業を一覧にし、類型化する「事例集」である。本来成功した事業を見るときには、長い時間軸で追ってプロセスを多角的に、深く理解しなければいけない。しかし、事例集の多くは結果を単に整理したもので、わかった気にはなれても実行時にはまったく役に立たない。
・最初は地元の民間がリスクを負って挑戦し成果をあげていた事業が水平展開の対象となり、全国的に様々な類似事業に補助金が出された結果、今や影もカタチもないというケースは後を絶たない。毎年、成功事例は補助金を使うための政策的な道具として使い捨てをされている。補助金をもらって成功地域の取り組みをパクってもほかの地域で役には立たないし、成功した地域も視察見学に忙殺されて衰退するだけ。この仕組みに乗らないように気をつけなくてはならない。
私は地域再生の取り組みの当事者ではないので、本書の内容をそのまま肌感覚で理解はできていないが、熱量持った当事者がいないと事は成し遂げることができないことはよく分かる。
自分の小さな世界の中での経験でも、たしかにそうだ。
また、本書は地域再生の話だが、地域が抱える問題は企業の問題と同じで、ここに書いてあることはそのまま企業での新規事業たちあげにも当てはまる。
地方も企業も、外部の力に頼るのではなく、既得権益者にひるむことなく、熱量持って自分たちの力で変革していかなければならないということを改めて思う。
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