文明崩壊
ピュリッツァー賞作家ジャレド・ダイアモンドの入魂の大作。
(上下巻あわせ800ページ)
過去の文明崩壊の豊富な事例を、環境問題、人口問題から考察し、
人類を存続させるために私たちの取るべき道を探る。
イースター島、グリーンランド、マヤ文明、ルワンダ、ハイチ・・・
これらは、環境問題、人口問題、政治問題等あらゆる要因が複雑にからみあって崩壊していった。
そして、グローバル化された現代では、環境問題は全世界共有の問題であることを実感させてくれる。
忌わしい例を1つあげれば、
全世界の種族のうち、血液から検出される有害化学物質の濃度が一番高いのが、
化学工場から最も遠いはずの東グリーンランドとシベリアのイヌイットであるという事実だ。
なぜか?
それは、イヌイットの主食であるクジラやアザラシや海鳥が魚介類を食べるからだ。
食物連鎖の環をひとつのぼるごとに有害物質の濃度が高くなる。
このような忌わしい例は枚挙にいとまがない。
さらに、本書は、読む者に恐ろしい光景を想像させる。
グリーンランドやイースター島では、
最後の人間が、残ったわずかな食料をゾンビのごとく、奪い合い、貪り食う・・・
ルワンダでは、
わずかな土地をめぐり、同じ国民同士が殺し合う・・・
しかし、それらは遠い過去、遠い異国の出来事ではない。
このまま人口増加、環境破壊が進めば、近い将来に、戦争、大量殺戮、飢餓、疫病による決着を見ることだろう。
ルワンダ型の状況が多くの未開発国に広がり、おびただしい難民が先進国に押し寄せ、
先進国の住民は快適な室内でテレビに映る他国のかわいそうな人びとを同情するような状況ではなくなる。
しかし、そういった悲観論だけでは無い。
これらの問題の解決は不可能に近いが、地球に隕石が衝突するのを回避するような絶対不可能な問題でもない。
環境問題、人口問題は自らが作り出した問題だからだ。
中国の少子化政策、江戸幕府の森林政策、ドミニカの環境政策、石油メジャーによる環境対策
などから一筋の光明が見える。
人類は愚かではない、少しずつ改善している。
ただそのスピードがベキ乗的な破滅のスピードに追いつけられるかどうかだ。
私たち個人も微力ながら貢献はできる。
環境を破壊する企業、非人道的な企業、それらと取引のある企業にNOと言うことだ。
これらは私たちが思っている以上に強力な手段らしい。
絶望的な数字、現実が並ぶ本書だが、最後に著者の希望の言葉を引用して終わる。
過去の事例を生かすも殺すも我々次第なのだ。
わたしたちには、遠くにいる人や過去の人々の失敗から学ぶ機会があるのだ。
過去のどの社会も、これほどの機会に恵まれてはいなかった。
現代に生きる人たちがその機会を活かして、失敗しない道を選んでほしいというのが、
本書を執筆するに際してのわたしの希望だった。
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