『パクリ経済』を読んで
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最終更新日:2022/02/18
本
コピーはイノベーションを刺激する。
と、聞いてどう思うだろうか。
けしからん。
そんな姑息なことがゆるされるはずはない。
コピーを自由に許してしまうと、誰も創造なんかしなくなるではないか。
もちろんその通りなんだけど、
歴史を振り返れば、コピーが業界のイノベーションを促進してきたのも事実だ。
パクリによるイノベーションの歴史を膨大な事例を紹介し分析している
『パクリ経済』
という本を読んだ。
ビデオデッキがでた当時、コピーによって映画産業は崩壊すると言われた。
でも、そんなことはなく、今やもっとイノベーションが進んでいる。
ナップスターは音楽業界を破壊すると言われた。
その後の iTunes、Spotify にコピー文化は受け継がれるが、
レコード会社が壊滅しただけで、音楽業界はより自由で想像的で活況を呈している。
ファッションのデザインは、瞬く間にコピー製品が出回り、デザインの寿命は短い。
にもかかわらずアイデアは枯渇することはない。絶え間なく新しいデザインが生まれている。
他にも、料理業界、アメフト、金融、フォントなど、多くの業種の、コピーによるイノベーションの歴史を膨大な事例を紹介し分析している。
とはいえ、コピーは全てイノベーションを刺激するわけでもないのも事実。
最近の漫画村やファスト映画のような悪質なコピーもある。
こういう悪質なコピーは法律で取り締まられるし、本書で取り上げられてるコメディのネタや手品のタネのように社会規範によって淘汰されるものもある。
現在のデジタル社会をささえているコピー文化がオープンソースのソフトウェアだ。
アパッチ、リナックス、アンドロイドOS、ファイヤーフォックス・・・
ソースコードがコピー不可だったら、いまのような便利なデジタル社会は訪れてないだろう。
先人たちの知恵がオープンで受け継げられてきたから、我々は巨人の肩に乗って、進化し続けることができる。
私のような、非エンジニアでプログラミング初心者の中年でも、この日経ビジネスの記事で取り上げてもらったように新型コロナウイルス感染症のウェブサイトを作れたのも、東京都がGithubでソースコードをオープンにし、コピーを許してくれたからだ。
活版印刷というコピーのおかげで、人類は時空を超えて知恵をシェアすることができるようになった。
パクリ経済は昔から存在しているが、悪質なパクリは駆逐され、良質なパクリがイノベーションを起こし続けてきた。
パクリが全部ダメだと否定するのでなく、パクリの力を理解し、どうイノベーションに活かすのかを見極めることが重要なのだと、本書は教えてくれる。
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