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単純な脳、複雑な「私」

公開日: :


不況の世相を反映してるのでしょうか、
最近は脳に関する本やTV番組が増えてます。
えてして脳ものは、スピリチャル、カルトのような怪しいものが多いですが、
本書は、日本の脳研究の第一人者である東京大学准教授の池谷裕二氏なので、ご安心してお読みください。
本書は高校生への講義を書籍化したものなので、
平易な文章で書かれ、私のような素人にも、すごくわかりやすい内容でした。
脳の話は、「へえ」という雑学で終わることが多いですが、
人生をサバイブするヒントもたくさん詰まっています。
たとえば、

■睡眠時間の重要性
 すごく難しい問題を、
 「昼間にする人」と 「徹夜する人」と 「寝る前に問題を見て8時間睡眠してすぐ解答する人」 を比べると、
 睡眠した人の方が圧倒的に正答率が高い。
 つまり、睡眠は脳や体をクールダウンするための休憩時間ではなく、
 積極的に情報の整理や保管を行うための活動的な行為である。
 つまり、「ひらめきは寝て待て」
 
■直感を高めるためには、努力、人生経験が必要
 
 直感は神からの啓司なんかでなく、本人の努力の賜物なのだ。
 直観は、反復学習や人生経験によって養われる。
 そのため、無意識の脳が今までの反復学習、人生経験から膨大な計算を瞬時に行っているのが直感なのだ。
 つまり、ぼうと無為な時間を過ごすのでなく、勉学に勤しみ、さまざまな経験をし、
 アンチエイジングではなく、グッドエイジングを目指しましょう。
■ノイズの重要性
 
 ゴルフのパットを例にすると、同じ距離でも毎回同じ結果にはならない。
 それは、脳の「ゆらぎ(ノイズ)」の状態で決まる。
 「ゆらぎ」は、
   ・最適解への接近
   ・弱いシグナルを増幅する
   ・「創発」のためのエネルギー源
  というメリットがある。   

本書でショッキングだったのが、
我々は、自分の自由意思に基づいて行動しているつもりなのだが、
実は脳に操られているだけで、自由意思など無いというくだり。
しかし、それならば、
脳に最適な行動を取らすには、無意識を鍛えればいいのだと思いました。
特に直感は神からの啓司ではなく、豊富な人生経験と反復学習という努力の賜物と述べられていたので、
やはり、様々な経験や自己鍛練が必要なのだと改めて思いました。
また、近年ダイバーシティ(多様性)という言葉が声高に叫ばれています。
いろいろな人間がいたほうが、活気ある社会、組織を形成できるからです。
その多様性の原点は、脳の「ゆらぎ」なんですね。
「ゆらぎ」があるからこそ、多様性が生まれ、面白い社会になるのです。
そして、「ゆらぎ」が必要な理由としての蟻の例を出したくだりには目からウロコでした。
ほとんどの蟻は秩序だって行動してるが、ほんの少数の蟻は群れとは勝手な行動をしている。
でもはぐれた蟻がエサへの最適なルートを見つけるやいなや、全体がそれに続く。
つまり、人間社会や組織でも規則どおりに真面目に働く人ばかりでは、進歩しないということ。
ごく一部の変人が道を切り開くからこそ人類の進歩がある。
そうなんだ。
ゴルフのパットをはずすのも「ゆらぎ」のせいですが、
イノベーションを生むのも「ゆらぎ」のおかげなのです。
さらに「ゆらぎ」は、「創発」につながります。
「創発」とはランダムなノイズから美しい秩序が生まれるという現象のこと。
たとえランダムなことでも、とてつもなく繰り返せば、美しい秩序が生まれるのです。

我々は意識せずとも、脳がイノベーションを起こすように誘導しているのかもしれません。
とても希望あふれる話です。

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