マイクロソフトでは出会えなかった天職
社会起業家とは何ぞや?
この本にその答えが詰まっています。
原題は、
Leaving Microsoft to Change the World.
(世界を変えるためにマイクロソフトを辞めた)
著者は、マイクロソフトの要職についていたが、
休暇で訪れたネパールでの体験が、彼を変えた。
ネパールの学校には本が無い。
最初は友人・知人から本を寄付してもらい、ネパールの学校へ届けることから始めるのだが、
マイクロソフトの輝かしいキャリアを捨て、NPO「ルーム・トゥ・リード」を設立、
本の寄付、学校・図書館建設までてがけるようになる。
といっても、退屈でマジメなボランティアの話ではない。
起業や新規事業を立ち上げるためのワクワクするドキュメンタリーであり、
実務的な経営の書でもある。
多くの慈善団体は、経営センス・営業センスがないため、
・安定かつ永続的な活動ができず、散発的な援助やイベントに終わってしまう。
・寄付金の具体的使途が不明だし、寄付者に伝わっていない
といった問題がある。
資金を継続的に確保して、持続可能なプロジェクトにするには、
企業と同じ発想のビジネスモデルが必要なのだ。
「ルーム・トゥ・リード」の主な方針
①活動の成果や出費の内訳を詳細な数字で報告する
②運営コストを抑え、実際の活動に最大限の投資をする
③地域社会も資金や労働力を提供し、住民が主役となってプロジェクトを定着させる
④地元の優秀なスタッフを集め、地元の文化にあわせたプロジェクトを育てる
まさに、グローバルで活動している企業と同じ発想ではないですか。
非営利団体であっても企業と同じ発想で活動しなければ、本当の社会貢献はできないと述べています。
このなかから、印象に残った箇所を抜粋
・幸運にもいい暮らしができているなら、自分が恵まれていることを知りなさい。
貧困のサイクルを断ち切るために助けを必要としている人びとに手を差し伸べることによって、仏に感謝しなさい。
(ダライ・ラマ)
・世界では8億5000万人が、基本的な読み書きができない。(つまり7人に1人)
そのうち、3分の2が女性。
その影響は悲惨なかたちで次世代に受け継げられる。
家で子供に本を読み聞かせるのは、もっぱら女性だからだ。
母親が教育を受けていれば、次の世代に受け継がれる確率がとても高い。
途上国ではあまりに多くの子供が、母親が教育を受けていないという不利益を背負って人生を始めている。
・小学校に入学する年齢の子供のうち、1億人以上が学校に行っていない。
これらの子供にチャンスは2度と来ない。 1年後や10年後では遅すぎるのだ。
・一部の慈善団体は栄養失調の家族の写真を見せると、寄付金集めに効果があると考えているが、
哀れみを利用して寄付者に懇願することは、貧困者をおとしめることになる。
そのような写真を見せることは人間の尊厳を否定している。
罪悪感をマーケティングに利用してはならない。
悲惨な状況を伝えるのは、CNNやBBCに任せればいい。
代わりに、山奥の子供が帽子とガウンを着て卒業式に臨む写真や、新しい井戸で水をくむ農民の写真を見せたほうが、寄付のもたらす希望を共有できる。
・世界を変える手助けをするために自分の人生を少し変えてみようと思っているなら、
アドバイスをひとつ
考えることに時間をかけすぎず、飛び込んでみること。
・最大のリスクは、たくさんの人が、あなたを説得して夢をあきらめさそうとすることだ。
世の中には、うまくいかない理由をあげることが大好きな人が多すぎる。
ひとりで考える時間が長いほど、否定的な力に引き寄せられて取り込まれやすくなる。
・僕は断れたらこんなふうに言う。
「ダメですか?『今はダメ』という意味ですよね」
・「大きく行け、それができなければ家へ帰れ」
大きく考えれば目標はおのずと実現する。
大胆な目標は大胆な人びとを引きつけるからだ。
・「個人を攻撃してはいけないが、アイデアは攻撃していい」
・情熱があって、自分の数字を知っている人間だけを雇うこと。
・忠誠心は双方向
世間には従業員から信頼を集める努力をしないまま、一方的に忠誠を要求するエグゼクティブが多すぎる。
・「それをできないと言う人は、それをしている人を批判するべきではない」(中国の格言)
・「世界のすべての音楽家がこの曲を同時に演奏したら、地球は地軸からはずれるだろう」
(ゲーテがベートーベンの交響曲第5番について述べた言葉)
途上国の子供たちの教育についても、僕(著者)はそんなふうに感じている。
最後に、本書とは直接関係ないですが、
貧困を解決することで、人類の大いなる可能性について述べたトーマス・フリードマンの希望の言葉を紹介します。
想像してほしい。
世界でもっとも貧しい人びとの創造力や革新的な能力を、私たちが利用できるかもしれないということを。
競争し、接続し、共同作業するのに必要なツールやエネルギーをあたえて、
彼らに力を授ければどうなるかを。 爆発的なイノベーションが生まれるはずだ。
科学、テクノロジー、芸術、文学など、あらゆる分野で、世界がかつて見たこともないようなものが。
(トーマス・フリードマン「グリーン革命」より)
ルーム・トゥ・リード公式サイト
http://www.roomtoread.jp/
【参考】ルーム・トゥ・リードへの寄付でできること
2500ドル・・・・・女子への奨学金10年分
3000ドル・・・・・図書館の開設
1万ドル・・・・・・・図書館の建設
1万2000ドル・・・・・・・・・・現地語による本の出版
1万5000~3万5000ドル・・・学校の建設
1万6000ドル・・・・・・・・・・語学教室、コンピュータ教室
※各施設に寄付者の名前を記すこともできる。
なお、寄付以外にも
不要な本(30冊以上)をブックオフを送るだけで、
途上国の子供たちに図書館や図書室をプレゼントすることができます。
詳細はこちら
http://www.roomtoread.jp/get-involved/make-a-donation
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