アカデミー賞作品賞受賞作『ムーンライト』を観て
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映画感想文 アカデミー賞作品賞受賞作, ムーンライト

僕は米アカデミー賞作品賞の映画はとりあえず観ることにしてる。
今年の米アカデミー賞の作品賞は「ムーンライト」だ。
アカデミー賞を取ったという事実以外はなんの予備知識なく観た。
ポスターを見る限り、人種差別をテーマにした作品かと思ってたら、全く違う。
テーマはもっと広く深い。
この映画は、ゲイの黒人の男の子が成長していく物語である。
主人公は黒人でゲイ、
と、マイノリティの中のマイノリティなんだけど、
そう行った差別を描いた映画でもない。
たまたま主人公がゲイの黒人だったというだけで、この設定を白人の男女のボーイミーツガール的な話に当てはめても、違和感はない。
何が言いたいかというと、
「普通な映画」なんだということ。
映画は娯楽である一方、社会問題に声を上げる手法だ。
人種差別に対しては、
「それでも夜が明ける」「遠い夜明け」「ミシシッピー・バーニング」「マルコムX」など
先人たちは、直接的な迫害を描き、声を荒げて人種差別に抵抗した。
LGBTの人権に対しても同様で
ショーン・ペン主演の「MILK」
のように、大きな声を上げ、権利を主張した。
しかし、この映画の手法は全く違う。
ヘイトする人間に対する有効策は、対抗するのでなく無視することだと何かで読んだことがある。
主人公はゲイであることでいじめられることはあるが、大きな迫害を受けてはいないし、ましては黒人であることで差別されてはいない。
ひとりの気弱な男の子の成長物語が淡々と進むだけだ。
冒頭で
「ムーンライトの下では、お前の肌の色はブルーだ」
というセリフがある。
肌の色はムーンライトの下では大した問題ではない。
そして、
主人公が初めてムーンライトの下で性行為を行うシーンで分かった。
ムーンライトの下では、肌の色も、性別も全て同じなんだと。
おそらく、そんなことが言いたかったのではないかと勝手に推測する。
直接的に社会問題を描写するのではなく、芸術的、文学的な静かな描写の中で、力強く多様性の素晴らしさに言及している。
全く主張を言わず、普通の物語にすることで、かえって差別主義者を困惑させるであろう。
「普通」を描くことが最強
静かだが力強い芯を持った映画である。
トランプのような差別主義者がアメリカの大統領になった今だからこそ、
世界が非寛容に向かって進みそうな雲行きの中だからこそ、
この映画から発せられるLGBTは特別なものではないというメッセージは重要だ。
この映画がアカデミー賞を取るという事実が、ハリウッドからトランプ大統領へ向けた静かな抵抗の証なのだ。
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