映画『ダンケルク』を観て
人間は何度も何度も困難に打ちひしがれると絶望になる。
三途の川にある賽の河原では、
子供が石を積んでも積んでも、鬼がやって来て、それを崩す。
手塚治虫の「火の鳥」で、
地下に閉じ込められた人間が、やっとの思いで崖を登り地上に辿り着いたかと思ったら、さらに高い崖が現れる。
映画界で、絶望を描くのがうまいと思うのが、クリストファー・ノーラン監督。
「ダークナイト・ライジング」で、悪役ベインの子ども時代、何度も何度も崖から落ちて、地下からの脱出に失敗するエピソード。
「インターステラー」で、人類を救う手は無く何十年も無駄な研究をしていたと分かるシーン。
そんなクリストファー・ノーラン監督の新作映画「ダンケルク」を観た。

第2次世界大戦で、ドイツ軍にダンケルクの海岸に追い詰められた英仏兵の脱出劇だ。
何度も何度も船で脱出を試みるも、何度も何度も沈められる。
もはや絶望しかない。
でも、諦めない。
本作は、戦争映画の体をなしているが、
究極の絶望から、「生きる」ために諦めない人間を描いている。
究極の絶望にいる人間を自らの命を顧みず助ける人間を描いている。
ノーラン監督の映画に対して、エモがない、人間ドラマがないと批判あるが、無駄に感情を爆発させるのが、エモではないし、意味のない人間ドラマは冷めてしまう。
食品添加物まみれの人間が、素材のいい刺身に味がないと言ってるようなものだ。
それにしても、没入感がすごい。
2時間近く、僕は絶望のダンケルクの砂浜にいた。
戦場を体験していた。
そのうちVRが映画を駆逐するかもしれないが、まだまだ劇場で見る映画の没入感にはかなわない。
最後に、
初老の民間人が、兵士から「なぜ危険を冒して助けに行くんだ?」と問われ、返答するセリフを我が国の上層部にも聞かせたい。
「我々の世代が始めた戦争に、我々の子どもたちが送られている」
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